2026/11/01
相続税を納めた人が、相続した不動産を相続開始からおおむね3年10か月以内に売ると、納めた相続税のうちその不動産に対応する分を「取得費」に加えられます。これを「取得費加算の特例」といい、取得費が増える分だけ売却益(譲渡所得)が減るため、所得税・住民税が安くなります。正確な期限は「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までです。
この記事では、取得費加算の特例を使える人、期限の数え方、加算できる金額の計算方法、空き家の3,000万円特別控除との違いを、足立区中川で不動産の売買・相続相談をお受けしている三敬商事株式会社が解説します。
取得費加算の特例とは、どんな制度?
正式には「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といい、相続税を納めた人が、相続した財産を一定期間内に売ったときに、納めた相続税の一部を取得費に加算できる制度です。相続税と、売却時の譲渡所得の税金の負担を調整するために設けられています(国税庁 No.3267)。
譲渡所得は「売却価格 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で計算します。この特例を使うと取得費が増えるため、そのぶん譲渡所得が減り、税金が安くなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使える人 | 相続や遺贈で財産を取得し、相続税が課税された人 |
| 売却の期限 | 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで |
| 加算できる額 | 納めた相続税のうち、売った財産に対応する部分 |
| 上限 | この特例を使わない場合の譲渡益の額まで |
| 対象 | 土地・建物のほか、株式なども対象(譲渡所得の場合) |
| 手続き | 確定申告で、計算明細書などを添付する |
出典:国税庁 No.3267(2026年10月時点)
相続した不動産の譲渡所得の計算方法や税率、ほかに使える特例の全体像は、次の記事で解説しています。
▶︎関連記事:相続不動産の売却でかかる税金|譲渡所得税の計算方法と使える特例
取得費加算の特例を使えるのは、どんな人?
使えるのは、相続や遺贈で財産を取得し、その人に相続税が課税されている人です。相続人であっても、自分に相続税がかかっていない場合は使えません。
使えるかどうかの判断のポイントは、次のとおりです。
- 相続税を納めているか:遺産の総額が基礎控除以下で相続税の申告が不要だった場合や、配偶者の税額軽減などで自分の相続税がゼロになった場合は、対象になりません。
- 相続や遺贈で取得した財産か:相続人が自分で購入した不動産は対象外です。
- 期限内に売っているか:相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日を過ぎると使えません。
- 売却で利益が出ているか:加算できるのは譲渡益の額までです。もともと売却益が出ない場合は、特例を使っても税額は変わりません。
同じ相続でも、相続人ごとに相続税額は異なります。不動産を相続して売る人が相続税をいくら納めたかによって、使えるかどうかと効果の大きさが決まります。
「3年10か月」の期限は、どう数える?
期限は「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までです。相続税の申告期限が、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内のため、合わせて相続開始からおおむね3年10か月が目安になります。
たとえば、次のように数えます。
| 項目 | 日付の例 |
|---|---|
| 亡くなった日(相続開始を知った日) | 2025年5月12日 |
| 相続税の申告期限(翌日から10か月以内) | 2026年3月12日(木) |
| 特例が使える売却の期限(申告期限の翌日以後3年を経過する日) | 2029年3月12日(月) |
ここでいう「売った日」は、原則として買主に引き渡した日です。ただし、売買契約の効力が発生した日を選んで申告することもできます(所得税基本通達36-12)。期限ぎりぎりの売却になる場合は、契約日と引き渡し日のどちらで判定するかを、事前に税理士に確認しておきましょう。
期限は「目安の3年10か月」ではなく、申告期限から正確に数えることが大切です。相続税の申告期限が土曜日・日曜日・祝日などにあたるときは、その翌日が期限とみなされるため(国税庁 No.4205)、日付がずれることもあります。相続税の申告書の控えで申告期限を確認しておくと確実です。
取得費に加算できる金額は、どう計算する?
加算できる金額は「その人の相続税額 × 売った財産の相続税評価額 ÷ その人が相続した財産の価額の合計」で計算します。つまり、自分が納めた相続税を、売った財産の割合で按分した額です(国税庁 No.3267)。
計算式の分母(その人が相続した財産の価額の合計)には、相続時精算課税の適用を受けた財産の価額や、相続財産に加算される暦年課税分の贈与財産の価額も含まれます。
計算例:相続税を600万円納めた人が、相続した財産(合計1億円)のうち、相続税評価額3,000万円の土地を売った場合を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| その人の相続税額 | 600万円 |
| 売った土地の相続税評価額 | 3,000万円 |
| その人が相続した財産の価額の合計 | 1億円 |
| 取得費に加算できる額 | 600万円 × 3,000万円 ÷ 1億円 = 180万円 |
この180万円だけ譲渡所得が減るため、長期譲渡所得(税率20.315%)の場合、所得税・復興特別所得税・住民税の合計で約36万円の節税になります。
※単純化した試算です。実際の加算額は、相続税の申告内容によって変わります。
計算した額が、特例を使わない場合の譲渡益を超えるときは、譲渡益の額が上限です。この特例で売却損を生み出すことはできません。また、計算は売った財産ごとに行います。不動産を複数相続していても、加算できるのは売った不動産に対応する分だけです。
空き家の3,000万円特別控除とは、どちらを選べばいい?
同じ家と敷地について、取得費加算の特例と空き家の3,000万円特別控除を両方使うことはできません。両方の条件を満たす場合は、税額を試算して有利なほうを選びます。
2つの特例の違いは、次のとおりです。
| 項目 | 取得費加算の特例 | 空き家の3,000万円特別控除 |
|---|---|---|
| 使える人 | 相続税が課税された人 | 相続税の有無は問わない |
| 対象の不動産 | 相続した土地・建物(マンションも対象) | 亡くなった方が1人で住んでいた1981年5月31日以前の家と敷地など |
| 効果 | 相続税の一部を取得費に加算 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 |
| 売却の期限 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(制度は2027年12月31日までの売却が対象) |
一般には、空き家の特例は控除額が大きいため、条件を満たせば効果が大きくなりやすい制度です。一方、マンションや、亡くなった方と同居していた家族がいた家など、空き家の特例が使えない不動産でも、相続税を納めていれば取得費加算の特例は使える可能性があります。
空き家の特例の条件と、使えないケースは次の記事で解説しています。
▶︎関連記事:相続した空き家の3,000万円特別控除|使える条件と使えないケース
取得費加算の特例を使うには、どんな手続きが必要?
売った年の翌年に確定申告をして、特例を受けます。確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書」を添付して、所轄の税務署に提出します(国税庁 No.3267)。
計算明細書では、相続税の申告書の数字を使って加算額を計算します。相続税の申告書の控えは、売却の時期まで大切に保管しておきましょう。
また、取得費加算の特例は、加算する前の「取得費」が分かっていることが前提です。相続した不動産の取得費は、亡くなった方が購入したときの金額を引き継ぎます。購入時の売買契約書や領収書が見つからない場合は、売却価格の5%を取得費とすることになり、税金が高くなりやすくなります。実家の片付けでは、契約書や領収書を処分しないよう注意しましょう。
期限内に売るために、いつから準備すればいい?
相続税の申告が終わったら、売るかどうかの検討を始めるのがおすすめです。遺産分割、相続登記、片付け、売却活動には、合わせて数か月以上かかることが多く、期限の直前に動き出すと間に合わないおそれがあるためです。
期限から逆算して確認しておきたいことは、次のとおりです。
- 相続税の申告期限と、特例が使える売却の期限(申告書の控えで確認)
- 遺産分割が終わり、売る人の名義に相続登記が済んでいるか
- 家財の片付けにどのくらいの時間がかかりそうか
- 購入時の契約書など、取得費が分かる書類が残っているか
- 空き家の特例も使えるか(使える場合はどちらが有利か)
税額の試算や申告は、税理士の領域です。当社では、顧問契約先の専門家と連携して、相続や税金のご相談にも対応しています。
家財が残ったままの実家でも、期限内の売却を相談できる?
ご相談いただけます。当社では、自宅整理・遺品整理から、遺品の買取、不動産の売却までを1つの窓口でお受けしています。代表は遺品整理士の資格を持ち、古物商許可も取得しています。
片付けと売却を1つの窓口にまとめれば、特例の期限から逆算して、片付け・査定・売り出しの段取りを組めます。片付けの際には、取得費の計算に必要な古い契約書や、相続税の申告書の控えなど、重要な書類を仕分けながら進められます。
実家が柏市やつくば市など、お住まいから離れた場所にある場合も、訪問・電話・メールでのご相談に対応しています。
よくある質問
相続税の申告をしなかった場合でも、特例は使えますか?
使えません。取得費加算の特例は、相続税が課税された人が対象です。遺産の総額が基礎控除以下で相続税の申告が不要だった場合は、空き家の3,000万円特別控除など、ほかの特例が使えないかを確認しましょう。
相続した不動産を複数売った場合は、どうなりますか?
加算額は、売った財産ごとに計算します。期限内に売った不動産それぞれについて、その不動産の相続税評価額に対応する相続税額を取得費に加算します。売る時期が期限の前後に分かれると、期限後に売った分には特例が使えないため注意が必要です。
相続税を払ったのに、売却でも税金がかかるのは二重課税ではないですか?
相続税は財産を受け継いだことにかかる税金、譲渡所得の税金は売却で得た利益にかかる税金で、対象が異なります。ただし、短い期間に両方を負担する重さを調整するために、この取得費加算の特例が設けられています。
相続した不動産の売却と税金のご相談は、三敬商事株式会社へ
三敬商事株式会社は、足立区中川を拠点に、不動産の売買・仲介・査定と、相続に関するご相談をお受けしている地域密着の不動産会社です。
対応エリア:東京都(足立区・葛飾区)、埼玉県(三郷市・八潮市・草加市)、千葉県(松戸市・柏市・流山市)、茨城県(つくば市・土浦市・守谷市)
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三敬商事株式会社
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- 電話:03-5682-5557/フリーダイヤル 0120-918-641
- 営業時間:店頭10:00〜17:00(水曜定休)、オンライン9:00〜21:00(年中無休)
- ご相談:予約制にて365日24時間対応
- 宅地建物取引業者免許:東京都知事(2)第103226号
参考・出典
- 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
- 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 国税庁 所得税基本通達36-12(山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)
